2011年3月23日水曜日

By the time I get to Phoenix

今朝は6時頃目が覚めました。すぐベッドを出る気になれず,ベッドのすぐ脇にある本棚に並ぶ本の背表紙を何となく眺めていました(地震が来たら,本に埋まって助からないよと娘に言われています。)。
一冊の本が目に止まり,手にとってみました。「シェークスピア&カンパニー書店の優しき日々」ジェレミー・マーサー著でした。読みかけのまま,他の本に浮気して,いつの間にか本棚に戻されていた本でした。本を開こうとしたら中に挟まっていた写真が5枚ほど落ちてきました。去年の5月31日に自宅のこのベッドの上に私の弟家族や友人たち総勢12名が乗って,妻と一緒に撮った写真でした。アメリカに向けて出発したのが6月1日。入院先から荷造りのために外出許可をもらって,自宅に帰っていた妻と,家の片づけなどを手伝いに来てくれた家族友人たちとの,旅立ち前のちょっと興奮した雰囲気の漂う,思い返すと,楽しい時間だったように思います。28日に乳ガンが脳に転移していることが分かり,余命2週間~2,3ヶ月と医者に言われていたとは思えない,笑顔の妻が写っています。

いつ買った本なのかなと思って,裏表紙を見ました。買った書店名と日付を裏表紙に書くのが,大学時代からの習慣です。去年の5月16日にJRタワーにある三省堂書店で買ったことが分かりました。記憶がよみがえってきました。去年買って,時々書いていた5年日記の5月16日を見てみました。
その日はニッコーホテルで妻とブランチを食べた日でした。二人で行って,ヨーグルトやフルーツを食べていた彼女のことを思い出しました。日記には「胃(吐き気),頭痛。歩けないので,レストラン前のベンチにKimを残して,三省堂へ」と書いてありました。歩くのがしんどいので,書店まで行けないというので,一人で三省堂に行って,この本を買ったのでした。その日がちょうど亡くなる1ヶ月前であることに気がつきました。そのときは,脳転移も1ヶ月後に逝ってしまうなどとは夢にも思っていませんでした。書店から戻って来て,ベンチの彼女が僕を見て立ち上がったときの姿が目に浮かびます。

娘が, 「お母さんが死んでしまうなんて,最期まで信じていなかった。まだ,本当に死んだなんて受け入れられない」と言って泣くようになっています。亡くなるまでのアメリカでの2週間の日々のことを思い出すようです。

東北の地震であっという間に愛する家族・友人などを亡くした人たちのことを思うと,涙が出ます。
妻は私の目の前で息を引き取りました。それは,間違いのない事実です。でも,まだそれが本当のことなのか信じられない気持ちが残っています。愛する人の死を受け入れるということは,本当に簡単なことではありません。被災者の方々がどんなに悲しい想いをしているか,テレビでその様子を見ながら,彼女がいないのだということを思い知らされています。

By the time I get to Phoenix   by  Glen Campbell   を聴きながら

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