2012年2月23日木曜日

ボブ・ディランの頭の中~日本語の響き

去年の12月16日のブログに,由紀さおりのことを書きました。日本語のままで歌う彼女の歌にアメリカ人が感動しているということですが,その理由として,外国人の歌手には彼女のようなソフトでメロウな唄い方の人があまりいないこと,そして,日本語の響きが外国人の耳にはとても優しく響くので,それがいわばヒーリング効果を持っているということが言われていたように記憶しています。

日本人には,日本語が外国人にどんな風に聴こえているのかということはなかなか分かりませんよね。僕はフランス語を少し勉強していますが,フランス語はなんだかボソボソと囁くように聴こえ,何となく哲学っぽいような響きを感じます。たまに話をする友人に,ちょっとフランス語で言ってみると,必ず「くすぐったくなる」と言われます。僕の発音のせいかもしれませんが,傾向としてはそんな感じだと思います。これに対してドイツ語は「角張った響き」というか,力強いというかちょっと乱暴なというか,そんな響きを感じることがあります(ドイツ人の方ごめんなさい)。イタリア語は,スペイン語は,ロシア語は,中国語は・・・とそれぞれのことばにはそれぞれの響きがあって,それを聴いた他の言語を母国語としている人に与える印象はそれぞれ違っていて,ことばって面白いなあ・・・と思います。

こんなことを書くのは,最近の洋楽(これって今の時代はとっても古くさい言い方かもしれませんが)の中で,日本語がそのまま使われていることが多くなっているような気がするからです。
ちょっと前に買った,MY CHEMICAL  ROMANCE というアメリカのバンドのDANGER DAYSというCDを聴いていたら,8曲目の中に突然女性の日本語が入って来てしばらく歌というより何かセリフを言っているという感じが続いたあと,何事もなかったように英語の歌に戻るというのがあって,最近,こんな風にいきなり日本語が入ってくる曲が洋楽の中に多いなあと思ったのでした。

思い出すのが,ニューヨークのW HOUSTON St.にあるAngelika Film Centerで観た,ボブ・ディランの映画「MASKED and ANONYMOUS」(邦題 「ボブ・ディランの頭の中」)という映画です。
いつか書いたことのあるニューヨークの大停電のあった2003年8月に観たのですが,冒頭にいきなり真心ブラザーズのMy Back Pages が流れて来て,びっくりしました。そのときは真心ブラザーズのことは全く知らなかったので,ただ日本語の歌がそのまま使われていることに驚いたのですが,監督はどういう意図でこの曲を使ったのか,詳しい人がいたら教えてほしいものです。

と,ここまで書いて止まっていたら,先日,NHKのクローズアップ現代で由紀さおりの海外でのヒットの分析のような番組をやっていました。日本語で詩を書いているアメリカ人のアーサー・ビナードがゲストで出ていたけど,アンカーの國谷さんとちょっと噛み合っていないように感じました。國谷さんは日本語の音としての響きを外国人がどう感じるのかという視点から訊きたかったのに, アーサーはことばの向こう側にある意味は普遍的なものがあってそれが伝わるんだということを言っていて,
僕の印象では國谷さんはちょっとやりづらかったように見えました。

これも書いたことがあったと思いますが,キンバリーはボストンの大学で,ロシア語を勉強したいと思っていたのが,その年度にはロシア語クラスがなくて,日本語にしたのでした。「ロシア語の響きがとても感情がこもっていてカッコイイ,素敵だと思った。」と言っていました。
じゃあ日本語はキンバリーにどんな風に聴こえていたのか・・・聞きそびれていたことに気がつきました・・・

意識のなくなる前日の6 月11日,キンバリーは「たけし,死ぬのはなんにも恐くないよ。何も後悔していないよ。」と言っていました。日本語でした。彼女は日本語を愛していたと信じています。

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