2012年5月8日火曜日

最近読んだ本

①夢よりも深い覚醒へ-3.11後の哲学  大澤 真幸 著 (岩波新書)
②人間と国家 上・下   坂本 義和 著  (岩波新書)
③世界史の構造  柄谷 行人 著  (岩波書店)
④政治と思想 1960-2011   柄谷 行人 著 (平凡社ライブラリー)
⑤Mourning Diary   ロラン・バルト 著

並行読書の本がほぼ同じ時期に終点に来て,立て続けに読み終わることになりました。
①は今回の大震災と福島原発の最悪の事態から,我々が未来の他者である子孫たちにどんな倫理的責任とを果たさなければならないかについて深く深く考察した本で,再読して読み込みもさらに深くしなければと思わせる一冊。未来の他者に対する倫理的責任という観念については,④においても触れられているところで,ドイツの哲学者カントの思想がいかに重要なものであったかについても教えてくれます。③は「交換形態」の観点から世界の歴史,これからの世界の行方について分析し進むべき道を示唆する一冊。柄谷氏は大学時代からずっと読み続けている思想家で,わざわざ彼の話を聴きに東京の神田まで行ったのはもう4年くらい前のことでした。これも再読必至。マルクスをしっかりと読むことの必要性を痛感させられました。
②は平和について一貫して考察し実践行動を続けてきた政治学者の自伝。大学時代,大江健三郎が坂本氏の本の帯に推薦のことばを書いていたことから何冊か読んではいたのですが,しばらく遠ざかっていました。戦前の中国で過ごした幼少年時代の経験が,その後の彼の生き方に深く影響しているところは,大好きな作家J・G バラードの経験と重なって,とても興味深いものでした。

⑤最愛の母親を亡くしたバルトの彼女を追想することばに何度打たれたか分かりません。キンバリーへの僕の想いがそのままことばになっているのがいくつもありました。この本はもともとはフランス語で書かれているのを,英語に翻訳されたものです。みすず書房から翻訳が出ていて,そちらはフランス語の原書からの翻訳。その翻訳を見てみると,英語の文章と微妙にニュアンスが違うようなところがときどきありました。翻訳の難しさと問題点があるように思います。

1904年6月16日のダブリンの一日を描いたジェムス・ジョイスのユリシーズはようやく350頁に達しました。まだ半分くらいです。全部で18章あるうちの第13章に入ったところですが,その前の文体と全く違う書き方で,ジョイスの才能の凄さを感じます。翻訳も参考にしていますが,信頼している柳瀬尚紀の翻訳がこれ以降まだ出ていません。丸谷才一他の翻訳を参考にしていますが,柳瀬氏の見事な日本語訳で早く読みたいものです。

ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第1番  ガルネリ弦楽四重奏団   を聴きながら

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