2011年5月10日火曜日

川本三郎~マイ・バック・ページ

川本三郎氏の著書を読みました。
①「小説家たちの休日 昭和文壇実録」(文藝春秋)
②「マイ・バック・ページ ある60年代の物語」(平凡社)

①は樋口進氏撮影の小説家の写真に川本氏の文章が組み合わさったもので,永井荷風から江藤淳まで65人の小説家・評論家についてのいろいろなエピソードが簡潔なしかし暖かい眼差しを感じる文章で描かれています。
獅子文六の筆名が「百獣の王ライオンの獅子に,文豪(文五)に勝る文六」から来ていることを初めて知りました。この筆名が何となく古くさい感じがして,今まで彼のものを読んだことはほとんどありませんでした。その彼が,29歳のときにフランスに留学し,そこで知り合ったフランス人女性と結婚して娘が生まれたが,その女性は若くして病没したということを知りました。男手で娘を育てることになり,その娘との物語「娘と私」という,昭和10年頃,身体の弱かった小学生の娘とひと夏を房総、九十九里の片貝海岸で過ごした思い出を描いたものがあるとあったので,探してみましたが,今売られている文庫にはなく,全集も書店にはないので,残念ながらまだ読めていません。彼の写真は,庭でパターの練習をしているところが使われています。同じような境遇だった彼に親近感がわいています。何とか「娘と私」を読んでみたいと思います。

②は川本氏がアサヒジャーナルの記者だったときに,ある事件に関わって,犯人隠匿の罪で逮捕され,会社を解雇されるまでの経過の中で,60年代の雰囲気を描いたもので,松山ケンイチ主演で映画が公開される予定です。このタイトルはボブ・ディランの歌から取られたものだと思います。

そして,「今も、君を想う」(新潮社)です。
氏の愛妻、川本恵子さんは,2008年6月17日の未明,食道ガンで亡くなっています。57歳。
川本氏が会社を解雇されたとき,婚約していた恵子さんに,婚約を解消したいと言ったとき,21歳の彼女は「私は朝日新聞社と結婚するのではありません」と言って,二人は結婚したのでした。

この本は,昨年の7月23日に購入して,8月19日に読了していますが,また読み直しています。キンバリーが亡くなって,娘の彩と札幌に帰って来たのが7月13日。何か自分を支えてくれる本がないかと書店を見て回る日々が続き,そのときにこの本に出会ったのでした。読みながら涙が止まりませんでした。恵子さんの亡くなったのが,2年前のキンバリーと1日違いであることにも何かのつながりを感じました。食道ガンは苦しむことが多いのに,恵子さんは医者も驚くくらい安らかな旅立ちだったとのことです。この題名は,今の僕のキンバリーへの気持ちそのものです。

映画評論もすばらしい川本さんにいつか会ってみたいなと思っています。
本が,今の僕の大きな支えのひとつです。

リスト  ピアノソナタ ロ短調 イーヴォ・ポゴレリチ(p)を聴きながら

1 件のコメント:

  1. 先刻事務所のポストに本を入れました。
    実家にあったように思い尋ねていたのが
    先程届いたものです。
    オフィスまでうかがって直接お渡ししようと
    思って出向いたのですがいきなりの雨で傘も
    なく、一方でどうしても16日にと意地になって
    いたこともあってかえって何か不審な行動に
    なってしまったことをお詫びします。
    取り急ぎ。

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