2011年10月7日金曜日

三四郎・めまい

並行読書(現在20冊くらい)の中の2冊である,漱石の「三四郎」とボワロー=ナルスジャックの「めまい」を読み終わりました。
「三四郎」は高校・大学生時代以来の再々読ではないかと思います。こんなに難しいことがいろいろ書いてある小説だったんだあ・・・という感想です。文章もかなり難解なところがあり,中・高生では理解しづらいところもあると思います。でも,面白かった。早速,読み返したいと思いましたが,他の本が待っているので書棚に戻しました。漱石全作品再読プロジェクト(笑)としては次に何を読むか検討中です。漱石は凄い人だとつくづく思います。漱石は岩波書店の全集を揃えてあります。漱石の主要作品で未読なのは「虞美人草」です。これは文体がこりに凝っていて,半分くらいで止まったままになっています。次の作品はこれにするかもしれません。

「めまい」は,ヒッチコックの映画の原作です。パロル舎から出ている,太田浩一氏の翻訳で読んだのですが,これも面白かったですね。ただ,ヒッチコックの方が人間心理が深く描かれていると思いました。高所恐怖症の元警察官という設定は同じですが,ヒロインとの関係の描き方が,ヒッチコックの方が人間心理を実に深く良く理解した表現で,さすがだなと思いました。ヒッチコックは単なるサスペンス映画の巨匠ではありません。人間心理の巨匠というべき存在です。フランスの映画監督であるトリュフォーがヒッチコック本人にその作品創造の秘密についてインタビューしたものをまとめた「映画術」(晶文社)という本は映画を本当に理解したい人にとっての必読書です。

映画の「めまい」は映画館で3回,DVDで2回は観ている大好きな作品です。何回目のときかは忘れましたが,この映画を観ながら泣いたことがあります。ジェームス・スチュワート演じる主人公の,死んだはずの女(実は生きている)と瓜二つの女(実は髪形や髪の色を変えた同一人物)を死んだはずの女そっくりに変えていくときの彼の気持ちがぐぐっと胸に迫って来て,涙が出たのでした。

キンバリーにそのことを話したことがあります。でも,なぜ涙が出るまで感動したのかをうまく説明することが出来なかったことを覚えています。今ならできそうです。でも,彼女はいません・・・

ベートーヴェン  ピアノソナタ「熱情」 ピーター・ゼルキン(p)を聴きながら

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