2010年3月15日月曜日

日本の刑事裁判はおかしい

蘭越事件(平成19年9月に発生した強盗殺人・強盗殺人未遂事件)の弁護人を他の2人の弁護士と担当しています。ニュースで知っている方も多いと思います(ちなみに,法廷の映像で,右側の弁護人席の一番手前に座っているのが私です。)。

検察官の論告・求刑(無期懲役)と弁護側の最終弁論が今月3日に終わり,あとは29日の判決ということになっていたのに,突然,裁判所が裁判を再開すると決めました。いくつか論点があるのですが,犯罪現場に落ちていたキオスクの袋の中に入っていたティッシュ(6個の塊)のうち,1個だけから被告人の精液の存在が確認できたことについて,警察の鑑定をした技術者を証人として法廷で尋問することになっています(今日の午後3時から。札幌地方裁判所の8階の法廷です。誰でも傍聴できます)。被告人と性的関係を持ったと証言している女性がいて,それによれば,少なくとも3個のティッシュに被告人の精液と女性の唾液が付着しているはずなのに,1個だけに,しかも女性の唾液は確認できないというのは有り得ない,つまり,警察による何らかの証拠捏造があったと考えられるというのが弁護側の主張。これに対して,検察官は,キオスクの袋が発見されたとき,雨が降ってティッシュが濡れたので,1個にしか確認できなかったのは何らおかしくない,と言っています。雨で濡れたから確認できなくなるなんてあり得ると思いますか?
今日の証人は警察側の人間ですから,当然,検察に有利なことを言うに決まってきます。私たちは,法医学の文献を何冊も調べ,例えば,唾液は1万倍に希釈されても確認できるということを見つけたので,もし証人がこれと違うことを言ったら,徹底的に突っ込むつもりでいます。

問題は,裁判所が,検察の立証の不十分なところを助けるために,今回のように裁判を再開して更に検察側に証明をさせるということがあるということです。私は,この事件と同じ裁判官たちに,検察官の不十分な証拠を補助するようなことをされて,無罪を主張していた事件で有罪とされた経験があります。

日本の刑事裁判には,二人の検察官がいるようなことがあります。本当の検察官と裁判官という名前の実質的検察官です。

さて,午後の裁判,どんな展開になるか。
のちほど報告します。

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