2011年6月7日火曜日

最後のプール~6分14秒

アイフォンのビデオに,去年の6月7日午後4時13分から撮影した6分14秒の映像が残っています。義妹の家のプールに腿のあたりまで入って,腕を組んで少し寒そうにしている姿から,ちらっと僕の方を見て,(水が冷たいため)まだ入るのに躊躇している姿があって,そして意を決したように水に入って平泳ぎでプールの端まで行き,帰りはクロールで。そんな風に泳ぐ姿が5分以上残っています。意識がなくなる12日の朝までわずか4日くらいしかありません。こんなに泳げるほどだったキンバリーが翌日から足が動きづらくなり,10日に小さな,そして11日には大きな痙攣が来てしまい,12日からは昏睡状態になったのでした。

プールの中で僕を見ながら「you’re busy」 と言っています。左手にアイフォン,右手に携帯を持って写真を撮っている僕を見て,そう言っています。日本の友人たちにキンバリーが元気に泳いでいる姿を見せてあげたくて,メール送信機能は携帯だけ使えたので,両手に持って彼女を写していたのでした。中学校時代には水泳部に入っていたほどキンバリーは泳ぎが得意でした。本人はこれが最後の泳ぎになるなどとは思っていなかったと思います。脳に転移したと知っても,そんな簡単には死なないと信じていました。いや,最後まで信じたかったのだと思います。
今,ビデオを見て,泣いてしまいました。

札幌にいて,ちょっと辛いのは,あのアメリカでのキンバリーとの日々を少しでも知っている人が回りには誰もいないことです。一緒に看病したり,彼女との時間を共有した人が誰もいません。あの日々については自分の中で反芻するしかないのが,辛いです。彩は,最後までキンバリーは死んだりしないと信じていました。彩とあの日々の話をすることはできません。

五嶋みどりのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いています。(ベルリン・フィル 指揮マリス・ヤンソンス)

キンバリーと一緒にキタラで彼女の素晴らしい演奏を聴いたのが懐かしい。
今月17日にキタラでの演奏会があります。行く予定です。私が弁護士になって2年間お世話になった事務所のI先生が誘ってくれました。嬉しいお誘いでした。キンバリーの命日の翌日です。
I先生は,キンバリーが亡くなる前の年に円山で偶然会ったときに声をかけてくれ,帰ってきたキンバリーから「嬉しかった」と聞いていました。声をかけるということが,どんなに慰めや勇気を与えるかということを,キンバリーとの時間の中で知らされました。










函館の依頼人の女性から,思いやりのこもった暖かいメールをいただきました。ありがとうございます。

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